reRouter+OpenWrtで作る展示会向けローカルルーター

Seeed K.K.の松岡です。

reRouterに最新のOpenWrtをインストールして、展示会向けのローカルルーターを構築してみました。

EdgeTech+ 2025のLoRaWANデモ

Seeed K.K.は、パシフィコ横浜で開催されたEdgeTech+ 2025に出展しました。 お立ち寄りくださった方々、どうもありがとうございました。

右奥では、気象センサーSenseCAP ONE S700 V2の測定結果をLoRaWANで通信してreTerminalに表示するデモを展示していました。

LoRaWANは、一般的にはEnd Deviceはクラウド上のNetwork ServerとLoRaWANで通信し、Network Serverから業務に応じたApplication Serverへ転送します。

https://files.seeedstudio.com/wiki/SenseCAP/introduction/lorawan-server2.png

ほとんどの場合、このNetwork Serverを自分で構築することはせず、いろんな会社が用意しているクラウド上のものを利用します。 例えば、The Things Network(TTN)では、The Things StackというNetwork Serverが提供されていて、そのうちの一つ、The Things Stack Sandboxは誰でも無料で使うことができます。 Architecture | The Things Stack for LoRaWAN

しかし、展示会ではクラウドサービスにアクセスできるようインターネットに接続できる環境を用意するのが難しいです。インターネット敷設が高価だったり、会場Wi-Fiが用意されていてもほとんど通信できなかったりします。辛い。

そんな事情もあり、上記のLoRaWANデモはインターネットと切り離されても動くように構築しました。

Network ServerはSenseCAP M2 GatewayのChirpStackを有効化して使いました。 Gateway製品ですがChirpStackがプレインストールされているんです。こういうときに便利ですね。

ここで「おや?一般的なスイッチじゃなくてルーターなの?」と気づいた方!すばらしい。

reTerminalを固定IPアドレスにして、ChirpStackにそのIPアドレスを設定すれば、普通のスイッチで大丈夫と思いますが、、、 reTerminalを諸々セットアップ(やアップデート)したり、PCからリモート接続して操作するときなどを考えると、サブネットにしてDHCPを立てておきたいなと。 そこで、EdgeRouter Xを使うことにしました。

DNSとNTPもEdgeRouter Xに立てたかったのですが、設定方法が分からず断念。むぐぐぐ。次の通り対処して、EdgeTech+ 2025を乗り切りました。

  • ChirpStackのMQTT Broker設定はIPアドレスで。DHCPサーバで、reTerminalのIPアドレスを固定にした。
  • reTerminalの電源ON後、手動で日時設定。

ずっとこのままでは悔しいので、展示会でささっと使えるルーターを作ります!

ローカルルーターの構成

Seeed製品のラインナップに、いろいろとイジれるオープンソースのルーター製品がありました。😅

  • reRouter ... Seeed製。1GHz-2ポート。Raspberry Pi Compute Module 4にOpenWrt。
  • LinkStar-H28K ... Seeed製。1GHz-2ポート。OSはOpenWrtベースのQWRT。
  • LinkStar-H68K-0232 ... Seeed製。2.5GHz-2ポート、1GHz-2ポート。AndroidやOpenWrtなど。(現在、Out Of Stock)
  • LinkStar-H68K-1432 ... Seeed製。技適無い。

手元にreRouterがあるので、これに最新のOpenWrtをインストールして、下図のように構成したいと思います。

宅内LANが192.168.1.0/24なので、lanは192.168.2.0/24とします。

reRouterにOpenWrtをインストール

手元のreRouterはOSがどんな状態か分からないので、最新のOpenWrtをインストールします。

BOOTモードで起動

底面のネジ4本を外して、底面パネルを外した後に基板を引っ張りだします。基板を剥がすのはチップがヒートシンクに張り付いているので少し硬いです。

次に、基板上のBOOTピンとGNDをショートしておき、USB-CケーブルでPCに接続します。

PCでrpibootを起動すると、reRouterのストレージがPCからアクセスできるようになります。

OpenWrtを書き込む

最新のOpenWrtをダウンロードします。 現在の最新は24.10.4でした。 イメージの種類は「FACTORY(EXT4)」を選びました。

balenaEtcherで書き込みます。

通常モードで起動

USB-Cケーブルを外して、BOOTピンのショートを元に戻して、ケースも元に戻します。

そして、PCとreRouterをLANケーブルで接続して、USB-CにACアダプターで電源供給します。 LANケーブルは下図のとおりUSBコネクタ寄りのLANポートに接続してください。もう一方のLANポートは有効になっておらず通信できないので。

OpenWrtを設定

ブラウザからOpenWrtを設定します。 192.168.1.1にアクセスして、OpenWrtの管理画面(LuCI)にログインします。 デフォルトのユーザー名とパスワードは「root」「」です。

インターフェースを設定

Network > Interfaces画面のlanをEditします。

  • Device ... eth0
  • IPv4 address ... 192.168.2.1

次に、Add new interface...でwanを追加します。

  • Name ... wan
  • Device ... eth1
  • Assign firewall zone ... wan

Save & Applyすると、IPアドレスを変更した影響で管理画面(LuCI)にアクセスできなくなります。 ipconfig /renewでDHCPからIPアドレスを再取得して、192.168.2.1にアクセスしてください。

正しく設定できると、lanが緑色でeth0、wanが赤色でeth1、lanのIPv4に192.168.2.1/24と表示されます。

DHCPとDNSを設定

Network > DHCP and DNS画面のDevices & Portsで、Listen interfacesをlanにします。

NTPを設定

System > System画面のTime SynchronizationでNTP serverを有効にします。

  • Provide NTP server ... チェックあり
  • Bind NTP server ... lan

動作確認

設定後は、狙い通りに動作しているか確認しましょう。

WANに接続

もう一方のLANポートをインターネットに繋がるスイッチに接続します。

wanにIPアドレスが表示されて、RXとTXの値が増えました。

DHCPを確認

DHCPサーバーが機能しているか確認しました。 netsh interface ip show configで「DHCP有効」が「はい」となっており、機能しています。

C:\>netsh interface ip show config

インターフェイスの構成 "イーサネット"
    DHCP 有効:                         はい
    IP アドレス:                           192.168.2.138
    サブネット プレフィックス:                        192.168.2.0/24 (マスク 255.255.255.0)
    デフォルト ゲートウェイ:              192.168.2.1
    ゲートウェイ メトリック:              0
    インターフェイス メトリック:                      25
    DHCP で構成された DNS サーバー:  192.168.2.1
    次のサフィックスで登録します:           プライマリのみ
    DHCP で構成された WINS サーバー: なし

DNSを確認

DNSサーバーが機能しているか確認しました。 PCのIPアドレスをDHCPから取得したときに自動的にDNSへ登録されているので、nslookupでPCのホスト名が名前解決できればOKです。デフォルトでLocal domainが「.lan」なので、ホスト名+「.lan」という名前で確認します。 nslookup DESKTOP-O9671AF.lan 192.168.2.1で正しくIPアドレスを取得できました。

C:\>hostname
DESKTOP-O9671AF

C:\>nslookup DESKTOP-O9671AF.lan 192.168.2.1
サーバー:  OpenWrt.lan
Address:  192.168.2.1

名前:    DESKTOP-O9671AF.lan
Addresses:  fd2f:c09b:8653::c83
          192.168.2.138

NTPを確認

NTPサーバーが機能しているか確認しました。 w32tm /stripchart /computer:192.168.2.1 /samples:3 /dataonlyで時刻が表示されました。

C:\>w32tm /stripchart /computer:192.168.2.1 /samples:3 /dataonly
192.168.2.1 [192.168.2.1:123] を追跡中。
3 サンプルを収集中。
現在の時刻は 2025/12/03 17:18:08 です。
17:18:08, +01.4553243s
17:18:10, +01.4553336s
17:18:12, +01.4553267s

通信速度を確認

wan側にあるストレージサーバーからlan側のPCに大きいファイルをコピーして、通信の帯域幅を確認しました。 Peakが837Mibit/sと、まぁまぁの速度が出ていました。

まとめ

  • 展示会向けローカルルーターをreRouter+OpenWrtで構築できた。
  • DHCP, DNS, NTPサーバーが稼働。
  • 通信帯域幅、Peak 800Mibit/s程度。
  • インターネットへ接続すれば、インターネットへの通信も可能に。
  • OpenWrt、設定が豊富なので面白い。
  • 連続稼働していると、reRouterがまぁまぁ暖かくなる。

変更履歴

日付 変更者 変更内容
2025/12/4 松岡 作成